賃貸住宅の選択肢!木造と鉄骨の違いを解説

賃貸住宅の多くは木造(W造)か鉄骨造(S造)で建てられており、構造によって間取りや耐久性、生活環境が大きく異なります。
木造住宅は軽量で建築コストを抑えやすく、断熱性や調湿性に優れる一方、経年による劣化や遮音性が課題です。
鉄骨造は耐震性や遮音性が高く、法定耐用年数も長いですが、断熱性能を確保するための工夫が必要です。

この記事では、2025年の最新情報を交えつつ、木造と鉄骨の賃貸住宅それぞれのメリット・デメリットや住み心地の違いを解説します。

賃貸住宅における木造と鉄骨構造の違いとは?

賃貸住宅では、主要な骨組みの材料により「木造」と「鉄骨造」があります。
木造住宅(W造)は木材を使用し、鉄骨造(S造)は鉄鋼材を用いて建てられます。
それぞれ材質が異なるため、耐久性やコスト、間取りの自由度などに違いがあります。以下に主要な特徴をまとめた比較表を示します。

比較項目 木造住宅 鉄骨造住宅(S造)
建築コスト 安い 高い
耐用年数 22年(法定耐用年数) 軽量鉄骨19~27年・重量鉄骨34年
遮音性 低い 高い
断熱性 高い 低い
耐震性 低い 高い

表を参考に、木造と鉄骨造の特徴を比較してみましょう。

木造住宅は建築費が抑えられ、断熱性・調湿性に優れる点が魅力です。鉄骨造は耐震・耐火性と遮音性が高く、長期的な視点で安定した賃貸経営がしやすい傾向があります。

木造と鉄骨造の構造の違いとは

木造住宅は柱や梁など主要構造に木材を用いた建物です。日本では戸建て住宅はもちろん、2階建て程度までの賃貸アパートに多く採用されています。
木材は軽量で加工しやすいため、建築コストを抑えやすく、間取りの自由度が高い点が特徴です。

一方、鉄骨造住宅は柱や梁に鉄骨(鋼材)を使用した建物構造です。
こちらは「鉄骨造(S造)」と呼ばれ、軽量鉄骨造と重量鉄骨造に分類されます。
鉄骨造は木造に比べて構造強度が高いため、大きな間口や3階以上の建物にも対応できます。耐震性や耐火性が高く、遮音性能にも優れる傾向があります。

鉄骨造の種類と特徴(軽量鉄骨・重量鉄骨)

鉄骨造は鋼材の厚みによって大きく2種類に分かれます。厚み6mm未満の鋼材を柱に用いたものを「軽量鉄骨造」、6mm以上の鋼材を用いたものを「重量鉄骨造」と呼びます。
軽量鉄骨造は軽量で施工しやすく、主に2階建て程度の賃貸住宅で使われます。重量鉄骨造は厚みがあるため強度が高く、中高層の賃貸マンションでも採用可能です。

耐用年数の観点では、軽量鉄骨造の法定耐用年数は約19~27年、重量鉄骨造は約34年と木造住宅より長めに設定されています。
このため鉄骨造は減価償却期間を長く取ることができ、金融機関から長期ローンを組みやすいメリットもあります。

木造賃貸住宅のメリット・デメリット

木造賃貸住宅には、建築や居住時において以下のようなメリットとデメリットがあります。

木造のメリット

  • 建築コストが安い:木材は他の構造に比べ材料費が低く、総工費を抑えやすいです。実際に国土交通省の2022年調査では、木造アパートの工事費用は1坪あたり約56万円だったのに対し、鉄骨造は約86万円と報告されており、木造のコスト優位が示されています。
  • 間取りの自由度が高い:木材は加工や変更がしやすいため、設計の自由度が大きいです。そのためデザインや間取りを柔軟に決められ、将来的なリフォームも行いやすいメリットがあります。
  • 断熱・調湿性能に優れる:木材には断熱性と湿度調整機能があり、室内温度を外気から守りつつ湿度を適度に吸収・放出してくれます。この調湿効果により、結露やカビの発生を抑えやすく快適な住環境を維持できます。
  • 税制面の優遇効果:法定耐用年数が短めに設定されているため、早期に減価償却が可能です。短期的には減価償却費が多くなるので、所得税や固定資産税の節税効果が期待できます。

木造のデメリット

  • 耐久性・耐震性がやや低い:木材は鉄骨に比べて強度が低く、経年劣化や虫害などで耐久性が落ちやすい素材です。最新の建築基準でも2階建て程度までの木造アパートは安全ですが、震度の大きな地震では揺れを感じやすいことがあります。
  • 遮音性が低い:木造住宅は壁や床の厚みが薄く、隣室や上下階の音が伝わりやすい特徴があります。甲高い音が響きやすいため、遮音シートや二重壁を使うなど建築上の対策が必要です。
  • 防火・防蟻の制限:木造は燃えやすく虫が基材を好むため、防火地域では建築に制限が掛かり耐火建築物にする必要があります。さらにシロアリ対策として防蟻処理や定期点検が欠かせません。
  • 経年劣化が早い:木材は湿気や紫外線による劣化が進みやすいため、外壁や屋根のメンテナンスが頻繁に必要です。長期使用すると腐朽や反りなども起こりやすく、定期的な補修・塗装が重要になります。

鉄骨造賃貸住宅のメリット・デメリット

次に、鉄骨造賃貸住宅の主なメリットとデメリットを見ていきましょう。

鉄骨造のメリット

  • 耐震性・耐久性が高い:鉄骨は強度が高く、地震の揺れに強い構造にできます。厚みのある鋼材を使えば更に剛性が増し、長期間にわたり変形しにくい安心感があります。
  • 遮音性が比較的高い:鉄骨造では床スラブや壁パネルを厚く設計しやすいため、木造より遮音性能を確保しやすい傾向があります。
    上下階の音の響きが抑えられ、集合住宅でも快適に暮らせる場合が多いです。
  • 大空間の確保が容易:鉄骨は高い強度を持つため、柱間の距離を広く取ることができ、大きな吹き抜けや広いリビング空間も可能です。
    デザイン性の高い賃貸物件づくりに向いています。
  • 工場生産で品質安定:鉄骨部材は工場で高精度に加工されることが多く、現場での品質ばらつきが少ないのもメリットです。
    均一な品質で安全性を確保しやすい点が評価されています。

鉄骨造のデメリット

  • 建築コストが高い:鉄骨造は木材より材料費や施工費が高くなります。
    同じ規模の建物でも木造より初期投資が大きくなる点は注意が必要です。
  • 断熱性が低い:鉄骨は金属のため熱を伝えやすく、断熱性能を確保するには外断熱や複層ガラスなど追加の断熱対策が欠かせません。
    特に外気の暑さ寒さが室内に影響しやすいため、省エネ基準に合わせてしっかり施工する必要があります。
  • 結露や温度変化のリスク:鉄骨造は木造に比べ湿度調整機能がないため、冬場に室内外の温度差で結露が発生しやすい点があります。
    最近の物件では高気密高断熱化が進んでいますが、換気計画も含め注意が必要です。
  • 構造重量による地盤負担:鉄骨造は建物自体が木造より重いため、地盤への負担が大きくなります。
    地盤改良工事や基礎の強化が必要になるケースがあり、建築コストの増加要因になります。

木造と鉄骨造、住環境への影響

木造と鉄骨造では、生活する上で感じる住み心地にも違いがあります。以下、遮音性や断熱性、結露などの観点から両者の特徴を解説します。

遮音性・断熱性

まず遮音性では、木造住宅は壁や床が薄いため生活音が伝わりやすいのが特徴です。木造アパートでは上下階の物音や隣室の声が響きやすく、静かな環境を重視する場合は防音対策が重要になります。

一方、鉄骨造は遮音シートやコンクリートスラブなどを用いる機会が多く、木造より比較的静かに暮らせます。ただし、施工や仕上げによって差が出るため、鉄骨造でも音の対策を確認しておくと安心です。

断熱性については、木造が有利です。木材は熱を伝えにくい素材で基礎的な断熱性に優れています。鉄骨は金属のため熱橋(ヒートブリッジ)が発生しやすく、断熱材を厚く施工するなどの工夫が必要です。
近年では鉄骨造でも高性能断熱材の採用が進み、新省エネ基準に適合する建物も増えています。

耐震性・耐火性

構造上、鉄骨造は剛性が高いため地震に強い設計が可能です。鉄骨とコンクリートの組み合わせた層構造などを使い、多層階でも安定した構造を組むことができます。
木造は鉄骨ほど強度はありませんが、現行の建築基準を満たせば2階建て程度の賃貸住宅では安心して暮らせる耐震性能が確保されています。

耐火性では、木造住宅は燃えやすい素材ですが、建築基準では防火・準耐火仕様を義務付けています。
一方、鉄骨造は鉄自体は燃えませんが、一定温度以上になると鋼材の強度が低下するため、耐火被覆を施すなどして安全性を保ちます。
いずれも法律をクリアする仕様で建てられているので、一般的な賃貸生活では安全基準は確保されています。

調湿性と結露の違い

木造住宅は木材が湿気を適度に吸放出する調湿効果があり、室内の湿度が安定しやすくなります。これにより冬場の結露やカビの発生リスクを軽減し、快適な住環境を維持しやすいのが強みです。

鉄骨造は湿度調整能力が低いため、特に冬季は結露が起こりやすい点がデメリットです。最近は断熱性・気密性の向上で結露対策が進んでいますが、換気計画も重要です。
どちらの構造も適切な換気や内断熱を組み合わせることで居住性を向上させることができます。

賃貸住宅選びで注目したいポイント

木造と鉄骨造では建物の特性が大きく異なるため、賃貸住宅選びではそれぞれの違いを踏まえた上で検討することが重要です。
ここでは、構造選びにあたって特に注目したいポイントを解説します。

賃料・コストの違い

木造は建築コストが比較的安いため家賃も低めに設定できる傾向があります。ただし、木造は耐用年数が短いため、長期的な維持管理費や修繕費がかかりやすい点を考慮する必要があります。一方、鉄骨造は初期費用が高くなりがちですが、耐用年数が長いため修繕費用にゆとりができます。
長期視点で収益を安定させたい経営者にとっては、鉄骨造の方が適している場合もあります。

防火地域・用途地域の制限

都市部では防火地域や準防火地域が指定されていることがあります。これらの地域では建物を耐火構造(鉄骨造やRC造など)にする必要があり、木造建築に制限がかかる場合があります。

また、用途地域(建ぺい率・容積率)によって建てられる構造や階数が決められている場合もあります。建築を予定している土地がどのような法規制に該当するか事前に確認し、適切な構造の物件を検討しましょう。

入居者層とライフスタイル

ターゲットとする入居者層や生活スタイルも構造選びのポイントです。ファミリー層や静かな環境を好む人を対象にする場合、遮音性が高い鉄骨造やRC造の物件がマッチしやすいでしょう。
一方、学生や単身者向けで初期費用を抑えたい場合は木造賃貸の方が向いています。
また郊外や地方では木造物件が多く、都市部では鉄骨造やRC造が選ばれる傾向があります。周辺環境や駅距離なども踏まえて構造を選ぶと良いでしょう。

まとめ

木造と鉄骨(S造)の賃貸住宅には、それぞれ特徴と違いがあります。
木造は軽量でコストを抑えやすく、断熱・調湿性能にも優れますが、耐久性や遮音性では鉄骨造より劣ります。
鉄骨造は耐震・遮音・耐火性能が高く、法定耐用年数も長いですが、建築コストと断熱対策が課題です。

賃貸住宅選びでは、これらのメリット・デメリットを理解した上で、家賃やライフスタイルなどの優先項目を考慮しましょう。
生活環境や地域の法規制も確認しながら、自分にとって最適な構造の物件を選ぶことが大切です。

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