木造住宅を守る!シロアリ対策の新常識とは?

木造住宅はシロアリの被害が深刻になりやすく、その被害が構造体に達すると耐久性能が大幅に低下します。
調査では30年で約2割の住宅が被害を受けるともいわれ、新しい予防・駆除技術への関心が高まっています。

この記事では、木造住宅に最適なシロアリ対策の基本と最新情報を解説します。
阪神・淡路大震災の調査でも、シロアリ被害のあった住宅は倒壊が多かったといわれています。
こうしたことを踏まえて、新しい知見を取り入れた対策が重要です。自宅を長く安全に保つためにも、早めの対策法を確認しましょう。

木造住宅に欠かせないシロアリ対策

木造住宅にはシロアリ被害のリスクがつきものです。木材はシロアリの大好物で、湿気の多い環境では発生が増加しやすくなります。
被害が進むと柱や土台が食われて建物の強度が大きく損なわれるため、初期段階からの対策が重要です。

シロアリ被害が建物強度を直撃

シロアリは木材内部にトンネルを造りながら増殖し、柱や土台を内部から侵食します。被害が進行すると構造材がスカスカになり、家の耐震性や耐久性が著しく低下します。
実際、阪神・淡路大震災ではシロアリ被害を受けていた住宅の倒壊が多く報告されており、対策を怠ると地震時の危険が高まります。

被害発生率の高さと防蟻保証の盲点

住宅におけるシロアリ被害は意外と身近で、30年で約2割の家が被害を受けるとされています。新築時に防蟻保証が付くケースも多いですが、効果が薄れる10年以降に被害が増えることもあります。
「保証があるから安心」と過信せず、定期的な点検・再施工が必要です。

定期メンテナンスで被害を防ぐ

防蟻処理の効果はおおむね5年程度で薄れていくため、家を建てた後も5年ごとに再散布を行うことが推奨されます。
自分でできる範囲ではホームセンターの防蟻薬剤を床下に散布したり、専門業者に再施工を依頼したりする方法があります。
継続的なメンテナンスで被害リスクを低減し、住宅の長寿命化を図りましょう。

シロアリが木造住宅にもたらす被害と早期発見のポイント

シロアリの被害を未然に防ぐには、シロアリの特徴と初期のサインを知っておくことが重要です。
代表的なシロアリにはヤマト、イエ、アメリカカンザイの3種類があり、それぞれ生息地域や大きさ、被害の仕方が異なります。
ここでは主な種類と住宅でよく見られる被害の兆候を紹介します。

ヤマト・イエ・アメリカカンザイの特徴

  • ヤマトシロアリ:日本全国に広く分布。湿った木材を好み、4~5月の昼間に活動が活発になる。被害量は最も多く、木材に蟻道(トンネル状の道)が残るのが特徴。
  • イエシロアリ:関東以西の温暖地に分布。乾燥気味の木材にも被害を及ぼし、9割以上が6~7月の夜に巣別れ飛行(羽アリ)を行う。加害力が強く、侵入できれば大規模な被害になる。
  • アメリカカンザイシロアリ:主に港湾周辺に生息。土中に巣を作らず、上空や建物表面から侵入するため防ぎにくい。木材に糞を固めたような崩れた痕が残るのが特徴で、乾燥した木材でも被害を受ける。

被害の兆候:羽アリや木屑に注意

シロアリ被害が進むと、室内で以下のような兆候が見られることがあります。蚊のように羽のある「羽アリ」を見かけたら、その年すでにコロニーから飛离してきた可能性が高いです。

また、木材に小さな穴や蟻道があったり、床下に粒状または糸くずのようなフン(蟻糞)が散らばっていたりするのも要注意のサインです。これらの症状に気付いたら、すぐに点検・対応を検討しましょう。

新築時に行うシロアリ対策

木造住宅を新築する際は、施工前の段階から防蟻対策を取り入れることが重要です。
建築基準法では防蟻処理が義務付けられており、どの方法を選ぶかで将来の被害リスクが変わります。以下に新築時に特に効果的な対策を示します。

シロアリに強い木材の選定と防蟻処理

ヒノキやヒバといった耐久性と香りに優れた木材は、シロアリの被害を受けにくい性質があります。
ただし、完全に食害を防ぐわけではないため、木材自体に防蟻剤を加圧注入する加工を施すのが一般的です。断熱材にもホウ酸系の防蟻剤を混入したものが使われており、新築時に加工すれば半永久的な防蟻効果が期待できます。

湿気対策と通気設計

シロアリは湿った環境を好むため、新築時に床下の乾燥を確保する設計が有効です。
基礎にはベタ基礎や基礎パッキンで床下換気口を作り、通気性のある床構造にします。
また外壁に通気層を設けて内部の湿気を外に逃がすことで、床下から雨水や湿気が伝わりにくくなります。

点検口の設置と隙間封鎖

床下に点検口を複数設けておけば、定期的に内部を目視点検できます。
シロアリは配管貫通部や基礎の打継ぎ部など細かな隙間から侵入しますので、これらは防水シールやモルタル充填でしっかり塞ぎます。
見えない部分ではありますが、最初に手間をかけて封鎖しておくことが長期的な被害抑止に繋がります。

バリア工法と防蟻シートの活用

建築前に行う「バリア工法」は、基礎の立ち上がりや周辺地盤に薬剤を散布する伝統的な方法です。最近では床パネル下に防蟻・防湿シートを張る工法も普及しています。
どちらも、建築現場に薬剤を散布するのではなく、あらかじめ加工された部材や薬剤を用いて施工するため、安全性が高いのが特徴です。
新築時にこうした対策を行っておくと、長期的にシロアリの侵入を防止できます。

居住中にできるシロアリ予防策

既に住んでいる住宅でも、シロアリ予防を継続することが安心につながります。日常生活で簡単にできる対策を講じ、シロアリを寄せ付けない住環境を整えましょう。

不要木材や段ボールは放置しない

家の周りや床下に木材や段ボールなどを放置しないようにします。これらはシロアリの格好のエサ場になるほか、ゴキブリやダニの発生源にもなります。
使わない材木や古い家具、新聞紙や古本などは早めに処分し、浴室や洗面所など水回りの木製品も腐食・汚れないよう清潔に保ちましょう。

湿気を溜めない換気を心がける

こまめに窓を開けて換気したり、定期的に床下換気口や換気ファンを動かしたりして湿度を下げます。また、エアコンの除湿や扇風機での空気循環も有効です。
洗濯物を外に干す、布団を日干しにするなど、室内に湿度を溜めない生活習慣を取り入れましょう。

通気口周辺の整理

床下・基礎の通気口付近には物を置かず、風通しを良くしておきます。臭いゴミ袋、段ボール、植木鉢などを通気口の前に置くと換気効率が落ちるため、通気口の左右1メートル程度は空けておくとよいでしょう。
雑草が伸びて通気口を塞がないよう周囲の清掃も欠かせません。

植木鉢の配置に注意する

植木鉢の水分がシロアリを誘引する場合があります。特に外壁際に近いと、植木鉢を媒介にシロアリが家に近づくリスクがありますので、外壁から離して置いてください。
鉢底には水抜き用のシートを敷くか、少量の砂利を敷いて水はけを良くしておくと侵入予防に役立ちます。

定期的な薬剤散布と点検

市販の防蟻スプレーやベイト剤を使い、定期的に薬剤散布を行います。
薬剤の効果はおおむね5年程度持続するといわれるため、5年に1度を目安に再散布するのが望ましいです。
床下点検口があれば、年に1回程度は専門業者に依頼して点検・再処置をしてもらうと安心です。

シロアリ発生時の駆除方法

もしシロアリ被害が見つかったら、できるだけ早く駆除することが必要です。
自力で駆除する方法と専門業者に依頼する方法、それぞれの特徴と注意点を理解しておきましょう。

家庭用薬剤やベイト剤を使った自力駆除

ホームセンターで購入できる液体スプレーやエサ剤(ベイト剤)を使い、被害木材や蟻道に直接散布します。
リスクが少ない薬剤を選び、トラップ型エサ剤はシロアリが巣に持ち帰る習性を利用して駆除します。
ただし、自力駆除ではシロアリ集団を完全に根絶するのは難しく、あくまで被害拡大を抑える補助的な手段と考えましょう。

専門業者による駆除作業

徹底した駆除には、シロアリ対策の専門業者への依頼が最善です。
業者は床下にもぐって木材や土壌に薬剤注入・散布を行い、見えない部分まで徹底的に施工します。
費用は数万円~十数万円程度ですが、長期保証を設定していることも多く、安全に駆除できるメリットがあります。
床下作業が危険な場合もあるため、怪我や薬剤飛散のリスクを減らす意味でも専門技術に頼るのが安心です。

駆除方法と業者選びのポイント

駆除方法にはバリア工法(床下全面への薬剤散布)やベイト工法(トラップ型薬剤設置)、局所処理(被害部分へのスポット散布)などがあります。
業者選びでは複数から見積を取り、施工範囲や保証内容を比較しましょう。

特に安価だけを優先すると再施工の手間が増えます。可能であれば防除協会などの資格を取得している業者を選ぶと、施工の確実性が高まります。

最新技術を活用したシロアリ対策

近年はシロアリ対策にもITやバイオ技術を取り入れた新しい手法が登場しています。従来の薬剤散布に加え、IoT機器や環境に優しい防蟻材を活用する事例も増えています。

探知犬やセンサーを使った早期発見

シロアリ被害は初期に発見しにくいため、専門家と共同でシロアリ探知犬を利用する調査技術が注目されています。犬の鋭い嗅覚で被害箇所を素早く検出できるため、通常の点検では見逃しやすい初期段階の食害も発見できます。

また、近年では床下の振動や温度・湿度を計測するIoTセンサーによる監視システムも研究・実用化が進んでいます。

最近話題のシロアリ探知犬は、人間の目では確認できない初期被害を嗅ぎ分けることができます。専門業者ではこの調査犬を使って床下全体をチェックし、リフォーム前や売買時の事前点検としても活用されています。

IoTやセンサーによる室内・床下見守り

スマートホーム技術として、床下の温湿度や振動を24時間監視するセンサーが開発されています。
これにより、シロアリが住みやすい状況(高湿度など)をリアルタイムで検知し、異常があればスマートフォンに通知を送ることが可能です。常時モニタリングを行うことで、被害が拡大する前に対策を打つ新しい防除スタイルと言えます。

ホウ酸(ボロン)処理やバイオ防蟻技術

近年、環境安全性の高いホウ酸系薬剤が関心を集めています。ホウ酸は毒性が低く、蟻だけでなく有害微生物も抑制する効果があります。
また、ホウ酸を含浸させたセルロースファイバー断熱材は断熱性・防蟻性を両立する製品として注目されています。

さらに、シロアリのフェロモン攪乱や寄生虫利用など、生物学的手法を応用したバイオ防除研究も進展しており、将来的な新常識となりつつあります。

セルロースファイバー断熱材の活用

セルロースファイバーはホウ酸や天然防蟻剤を含む製品があり、断熱と同時にシロアリ予防が期待できます。
既存住宅への後付け施工は難しいものの、新築やリフォーム時に採用すれば、断熱効果を維持しつつ木材の食害を減らせるエコな手法です。

まとめ

木造住宅のシロアリ対策は、構造を維持するために設計段階から欠かせない要素です。
新築時の防蟻選材から居住中の予防・点検、被害時の駆除に至るまで、トータルで対策することが重要です。
最新技術の活用や定期的なメンテナンスを継続することで、大切な住まいをシロアリから守り抜きましょう。

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